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2017年03月27日

与那国島 陸自駐屯地発足から一年 最前線の活況と亀裂

明日で与那国島への陸上自衛隊配備から1年。
下に記事全文を貼り付けてあります。

先日、朝日新聞の記者が訪ねてきてインタビューを受けた際のコメントが、短いですが記事に載っています。
「村八分」という言葉が切り取られるとセンセーショナルに響きますが、それも真実である反面、実際に起こっていることは沈黙の連鎖です。
多くの人にとっては、語ることがタブーになりつつあります。
あまりにも小さな島であるがゆえに、職場であったり親戚関係であったり地域行事であったりと、人間関係があらゆるところに紐付けされて非匿名性で生きられないところに、この与那国島特有の苦しさがあります。

与那国島への自衛隊配備があまりに拙速であり、今更ながら急激な変化に驚いています。
配備までの住民の合意形成の過程で、知識も十分な情報もないまま、きちんとしたした議論がなされなかったことで、後々まで住民と家族連れで赴任してきた自衛隊員との間に消えない火種がくすぶり続けているのは、双方にとって不幸なことだと感じています。

私が「村八分」に「された」との表現は、客観的な事実はさておき、島内に「被害者」と「加害者」の関係を再び作り出すことになるので、そこは本意ではありません。
未だにこうして、自分の言葉遣いや振る舞いに気をつけて生きざるをえないのが与那国島のセンシティブな現状です。
付け加えると、行事に呼ばれなくなったと言うよりは、人が集まる場に自分が行きたくなくなった、または怖くなったというのが本音です。
自衛隊基地受け入れの賛否で、敵味方に分かれる分断を経験した与那国島の住民の中にも、私と同じように感じている人はいるはずで、地域共同体の緩慢な崩壊をどの程度止められるのかは、今のところ未知数です。

しかし、私が自らを「被害者」の立場に置き換えることが許されるのであれば、「加害者」は周囲の無関心であり、沖縄県の新基地建設に対する不作為であり、日本国の住民を無視した強硬姿勢であり、米軍の対アジア戦略であり、軍産複合体の金儲けにあります。

どんな傷からも人は立ち上がれるのかもしれませんが、実際に与那国島に投下された基地建設バブルの余波はまだ2、3年は続くのでしょう。
いわばお金という麻酔が効いているうちに進行する事態の深刻さに、今のうちにどのように向き合うかが問われています。
虚構を積み重ねれば積み重ねるほど落ちた時のダメージは大きく、それは経済だけではなく人間関係においても同様に言えることだと思います。
バブルの夢から醒めた時に、陸海空の基地を受け入れ人口減少に転じた対馬のように、ひとりまたひとりと島を去って行くのだと思います。

本当のところ、私が投稿しても島の人には読まれたくない、良からぬ噂が立たないように、そっとしておいてほしいという気持ちはあります。
実名入りのリスクにこれまで向き合いながら発信してきましたし、これからもこの島に住む限り、ギリギリの線で続けていくということをご理解いただきたいと思っております。
人間関係を壊さないようにコミュニティーに政治を持ち込まないというのが、ある種の島人の気遣いや優しさであったとしても、戦争態勢への具体的な一歩を踏み込まれた危機感を、現場から伝え続ける必要を感じています。
また、逃げ場のない島で、戦争リスクの最前線に立たされてしまったと言うのがリアルな実感であり、抑止力などに守られている安心感などはカケラもありません。

小さなこの島で生きて人生を平和に全うしたいと願うのが全島民共通の願いです。
時代の空気がファシズムから戦争へ一気に加速するのか、また平和への希求が時代の流れを変えるのか、そのターニングポイントはいつか訪れるのだと思っています。
時代の流れが変わるその時まで、島の中にある灯火を絶やさない連帯が何よりも求められていることを、一年経った今、再び強く感じています。
お金と権力のピラミッド構造に目を向けるとあまりに巨大すぎますが、それでも私が日本語を使って水平方向に呼びかける仲間が日本や世界にいることが希望です。
地球上にはカオスという可能性が無限に満ちていて、もしかしたら蟻の一穴が、ここ日本最西端の与那国島から起こらないとも限らないのですから。

与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島、奄美大島へ、自衛隊発足後最大の軍事シフトが起こっていることを全国の人たちに知ってほしいと切実に思います。
そして、それぞれの島で生活している人々のみならず、自衛隊員やその家族も巻き込んで玉砕の島にするような、日本政府が描く自衛隊配備計画へ反対の声が、日本中から沸き起こることを与那国島より願っています。

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(変わる安全保障)与那国に自衛隊、潤いと不安 配備1年

屋上から庁舎を案内する与那国駐屯地司令の塩満大吾2佐=16年12月2日、沖縄県与那国町、小山謙太郎撮影

 海洋進出を強める中国を念頭に置いた防衛力強化の一環として、日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)に陸上自衛隊駐屯地が開設され、28日で1年。誘致への賛否が二分した島は、どう変わったのか。

 ■建設工事や税収増・島離れた住民も

 今月23日、町立与那国小学校で卒業式があった。児童数は50人前後だったが、この1年で自衛隊員の子供たち13人が編入。全児童数が2割以上増えた計算で、複式学級が解消された。

 その前日、小高い丘を背に海原を望む与那国駐屯地では、隊員用の体育館や倉庫の建設工事が続いていた。島は今も建設業者らでにぎわう。「飛行機の席も民宿も予約が取りにくい。まだまだ続くよ」とレンタカー店長は話す。

 町が自衛隊誘致に動いたきっかけは財政への危機感だった。
 終戦直後の島は人口1万2千人。昨年2月には人口1500人を割っていた。島を二分した議論の末、一昨年の住民投票で誘致賛成が上回った。昨年3月以 降、約160人の隊員とその家族あわせて約250人が転入し、人口は1715人(今年2月末)に増加。住民税と駐屯地の地代の計約5800万円が町の新た な収入になった。

 隊員たちは積極的に島に溶け込もうとしている。島の3地区に宿舎を建て、自治会の祭りや運動会に参加。駐屯地司令の塩満(しおみつ)大吾2佐(39)は「今後進む南西諸島への配備の模範としたい」と話す。

 駐屯地の中はどうなっているのか。昨年12月に日本記者クラブの取材団に加わり、訓練などを取材した。 島への武装勢力の侵入を想定し、スクリーンに向けて模擬銃を撃つ。土地が限られているため実弾演習場はなく、訓練には屋内シミュレーターを使う。

 駐屯地には警備部隊と、東シナ海の中国軍などの動向を山上からにらむ高性能アンテナ5基などを運用する部隊が常駐する。塩満司令は「航空機や艦船からの監視と違い、24時間定点観測できる」と話す。

 ただ島には亀裂が残る。カフェを営む猪股哲さん(40)は反対活動を続けるが、賛同者は減り、祭りや運動会に呼ばれなくなったという。「村八分のような 状態です」。民宿を営む狩野史江さん(57)は「迷彩服姿の隊員が目立ち、雰囲気が変わったねとお客さんに言われる。島を離れた住民も多い」と話す。

 町の有権者約1300人のうち隊員とその家族で200票以上あり、町長選や町議選の結果を左右する可能性もある。反対派の田里千代基(たさとちよき)町議(59)は「島が自衛隊城下町になりかねない」と懸念する。

 有事の際、島民がどう避難するのかを示す町の国民保護計画は未策定だ。町は今月末から沖縄県と本協議に入り、計画を作ることにしている。(小山謙太郎)

 ■進む「南西シフト」
 対中国を念頭に進む「南西シフト」。今月19日の防衛大学校卒業式で、安倍晋三首相は「南西方面では外国軍機による領空接近も増加している」と言及し た。稲田朋美防衛相も3日の記者会見で「南西諸島などをめぐる状況を考えると、自衛隊の施設を置いていくことは重要だ」と述べた。

 防衛省・自衛隊は与那国島への陸自配備を皮切りに、宮古島市と石垣市にも警備部隊とミサイル部隊の配備を計画。昨年、両市に正式に要請した。新年度予算案では、宮古島市への陸自配備に向けて土地取得費や整備費など、約310億円を計上している。

 尖閣諸島がある石垣市では「中国公船が領海侵犯を繰り返し、危機感がある」と語ってきた中山義隆市長(49)が昨年末、配備手続きの開始を表明。宮古島でも、受け入れを表明した下地敏彦市長(71)が今年1月に再選された。

 だが、両市の反対派住民たちは「防衛省や市が建設地など具体的な配備計画を明らかにせず計画を進めている」として反発する。「石垣島への自衛隊配備を止 める住民の会」の上原均事務局長(63)は「基地があるから攻撃されるリスクもあるのに、国は不利な点を説明しない。これでは議論が深まらない」と語る。

 ◆キーワード
 <「南西シフト」> 政府は2013年の新防衛大綱で「南西地域の防衛態勢の強化、防衛力整備を優先する」と明記。500~800人規模の部隊を鹿児 島・奄美大島、沖縄・宮古島、石垣島に配置。離島を侵略された場合、戦闘機や護衛艦の支援を受けて上陸する「水陸機動団」も来年3月に長崎県佐世保市に新 設される。


与那国島 陸自駐屯地発足から一年 最前線の活況と亀裂
与那国島 陸自駐屯地発足から一年 最前線の活況と亀裂




Posted by Moist Chocolat at 16:46│Comments(0)
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